3月議会においては、政府が決定した生活保護の基準額引き下げの見直しを求める意見書案を、渡井が作成し、民主党渋谷区議団としてを議会に提案をいたしました。
一方、渋谷区議会自由民主党議員団(以下自民党)からも生活保護に関する意見書案が提案されましたが、自民党案は「国の責任において自立支援の更なる強化を求めると共に、就労に対し最善の努力を行わないものを受給対象から外すことを保護法に明文化することを条件に引き下げの見直しを求める」というものであり、私たちはこれには賛同できず、最終的に意見書の提出には至りませんでした。
生活保護法第八章(生活上の義務)第六十条には「被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければならない」とあります。しかし、生活保護を受けている世帯の7割以上は高齢者世帯や病気やけがの人がいる世帯であり、中には精神障害を抱えている方も多く、こういった世帯の方はなかなか職に就けない現状があります。また、生活保護受給者の自殺率は通常の自殺率の2倍以上というデータもあります。
私たちも意見書の文中において「就労支援の強化」を求めておりますが、自民党案の条件にある「保護法への給付対象の除外の明文化」は、受給者の精神に過剰なプレッシャーを与え、更なる自殺の増加につながりかねないと考えます。
以下、意見書案の全文です。
生活保護扶助費の基準額引き下げの見直しを求める意見書(案)
政府は平成25年度予算案において生活保護扶助費の基準額引き下げを決定した。
これは平成25年8月から3年間で670億円、生活保護費の国庫支出の約6.5%を削減するものであり、その理由は物価下落による基準額の「ゆがみ」を是正するというものである。
しかしながら、物価の下落は、ここ十数年の長引く不況下のデフレスパイラルによるもので、いわゆる生活困窮者の生活実態が楽になっているわけではない。また、全て生活必需品の物価が下がったわけではなく、特に光熱費などは上昇しているのが現状である。
生活保護扶助費の基準額は、地方自治体の様々な施策の対象となる、非課税世帯の基準額算出の目安ともなっており、今回の基準額の引き下げによって、生活保護受給世帯でなくとも低所得世帯の負担が増加する可能性もあり、地方自治体においても大きな影響を及ぼすことも十分考えられる。
生活保護制度においては、就労支援の強化など見直すべき点もあるが、憲法25条の生存権である「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を担保するためにも、渋谷区議会は、今回政府が決定した、上記の理由における生活保護扶助費の基準額引き下げについて見直しを求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成25年 月 日
渋谷区議会議長
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 あて
厚生労働大臣
文部科学大臣
総務大臣
区政レポートVol.14より